セセデ連続講座2008年 5月 - 6者会談こう着状態の根本原因

◆朝米ジュネーブ会談◆
 朝米会談が3月13日、ジュネーブで行なわれた。現在こう着状態の6者会談。打開には共和国の正確な「核申告」が必要と言われている。はたしてそれが問題の本質なのか。


昨年9月末に開かれた6者会談後、平壌空港でインタビューに答える金桂寛次官補。
これ以降6者会談は開催されていない。
アメリカは「10.3合意」の履行を早急に行なう必要がある
(写真提供:朝鮮通信社)


今年最初の朝米直接会談が、3月13日にスイス・ジュネーブで行なわれた。朝米直接会談が持つ6者会談への意義は非常に深い。昨年来ヨーロッパで行なわれた朝米会談は、その後の6者会談の流れを作っているとともに、昨年1月のベルリン会談、9月のジュネーブ会談は、それぞれ「2・13合意」と「10・3合意」に結びついていることがその証拠だ。6者会談が朝鮮半島の非核化を協議する場=朝米関係正常化の場である以上、朝米の直接交渉は決して見逃せない。

 今回のジュネーブ朝米会談は、昨年12月末が期限であった「10・3合意」の履行が遅れ、こう着状態に陥ってしまっている6者会談の突破口作りを図ったものと考えられるだろう。ヒル米国務次官補は会談に先立ち、「今回のジュネーブ会談は、北朝鮮側の提案で実現した」と述べている。そして、「私たちは、北朝鮮の核申告の形式については、ある程度柔軟性を持たなければならないと考えるが、形式の柔軟性が完全かつ正確な核申告に対する柔軟性を意味しない」と説明した(東亜日報2008・3・14)。この発言から、アメリカは6者会談のこう着状態を、共和国が核申告を正確に行なっていないからと考えていることがわかる。特に共和国の高濃縮ウラン(HEU)による核開発計画や、シリアへの核移転疑惑(核拡散活動)に関することを核申告に含めるよう、アメリカは共和国に強く要求している。

 今回のジュネーブ朝米会談の焦点の一つとなったのは、アメリカが共和国に対して柔軟な対応を示し、高濃縮ウランとシリアとの核協力の問題を核申告から分離させる方法を取るかどうかであった。実際ヒル次官補が、1972年に米中が対外政策などの相違を認めつつ、台湾問題などで両国の主張を併記し関係正常化にこぎつけた「上海コミュニケ」を参考にしているとの報道も流れた。日本の報道でも今回のジュネーブ会談を、「北朝鮮による『すべての核計画申告』をめぐって停滞している事態の打開を目指す米朝協議」(産経ニュース)などと報じており、共和国がいかに正確に核申告を行なうのか、アメリカは共和国が正確な核申告を行なえるような案を提出するのかに注目が集まった。

 それではジュネーブ朝米会談で協議されたことを見ていこう。今回も例に漏れず具体的には明かされていない。朝鮮中央通信は、「会談では、6者会談の10・3合意履行に関連し、朝米間に存在する意見の相違に対する具体的な議論があった。朝米双方は、今後も10・3合意履行における問題の解決方途を直接対座して引き続き協議していくことにした」とだけ報じた。ここで注目すべきは「意見の相違」である。アメリカが核申告に盛り込むよう主張し続けている、ウラン濃縮とシリア問題。共和国は以前からこの二つの問題の存在を否定してきた。今回の会談後も金桂寛外務次官は、「高濃縮ウランとシリアへの協力は、過去も今も一切ないというのが我々の立場だ」と強調していた。要するに、アメリカが核申告に二つの問題を書き込むよう求めているのに対し、共和国はそもそも「ない」問題を書き込むことは出来ないと主張しているのだ。今回のジュネーブ朝米会談で確認し合った最も大きな「意見の相違」とはこれである。結論は「核申告で合意は得られず」となる。

 さて、ここで立ち止まって、6者会談の原則をマクロな視点から考えてみよう。「9・19共同声明」にはっきりと書かれている通り、原則とは「行動対行動」である。これは、約束した合意に対しては、実際の行動で履行を示すということを意味する。今回やたらに共和国の核申告問題ばかりが注目されていたが、そもそもアメリカはいつ「行動」したのだろうか。「10・3合意」の義務は、共和国は@核施設の無能力化、A核計画の申告の二点。アメリカは@共和国に対するテロ支援国家指定の解除、A対敵通商法の適用終了の二点である。共和国の寧辺の核施設は無能力化が昨年12月頭から始まっており、アメリカへの核申告も行なわれた。アメリカはこの核申告を不十分としているが、申告したからこそ次の「不十分」という段階にいけたとも言える。これが「10・3合意」に沿った共和国の「行動」である。  それに対しアメリカは、@テロ支援国家指定の解除に対しては、検討中という枠を出ないし、A対敵通商法の適用終了は、話題にも上がっていない状態だ。6者会談の原則「行動対行動」は、現段階でまったく守られていない。この一方的なアメリカの「不行動」のせいで、である。現在、共和国の核申告の裏に隠れている6者会談こう着の根本原因は、アメリカの「不行動」であることを見逃してはならない。

 アメリカが共和国の核申告に難癖をつけ、その申告範囲と時間を引き延ばしているのは、どうもアメリカ内部の対立が原因のようである。アメリカ国内の強硬保守派の圧力を、抑え切れていない。3月23日、米紙ワシントン・ポストのあるコラムニストは同紙のコラムで、米情報当局が北朝鮮とシリアの核協力について確信を抱いていると報じた。米情報当局高官は「我々の疑惑は正当で妥当なものだ。多くの精査をした。関係者は確信を持っている」と述べたという(読売新聞2008・3・24)。共和国がジュネーブ朝米会談で改めて否定したシリアとの核協力を、さらに否定した形となる。振り返れば6者会談で初の共同声明が発表された時も、すぐに共和国の「偽ドル札疑惑」が浮上し、6者会談が停止した。この「偽ドル札疑惑」は、今ではなんの話かも思い出せないほど、事実無根のこととして忘れ去られた。今回の「疑惑」もこの「前科」を考えると、一部の保守勢力が流したデマであることは明らかであろう。6者会談が今後進展するためには、朝米関係の正常化が絶対条件となる。何か合意がなされる度に共和国の「○○疑惑」を生じさせている現在のアメリカは、例えそれが一部勢力の動きであれ、6者会談を遅延させる役割しか果たせないでいる。

 核申告での合意を得られなかった今回のジュネーブ朝米会談。しかしこう着状態の根本原因は、より鮮明になった。会談後、アメリカの義務であるテロ支援国家指定の解除について、金次官補は「そのタイミングなどを協議した」と言明した。また、この問題でアメリカから評価に値する説明はあったのかとの記者団の質問に対し、「それは様子を見よう」と述べ、慎重な言い回しに留めた(読売新聞2008・3・14)。共和国は「10・3合意」の履行に沿って行動し、6者会談の原則通りにアメリカの行動を待っている。こう着状態の原因は共和国の核申告ではなく、アメリカの義務不履行にある。「もしアメリカが引き続き、ないものをあるかのように捏造しようと強弁を張りながら、核問題の解決を遅らせるなら、今までかろうじて進められてきた核施設の無力化にも深刻な影響を及ぼしかねない」(共和国外務省2008・3・28)。選択を迫られているのは、常にアメリカの方なのである。






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