| ■セセデ連続講座2008年 4月 - 6者会談合意を占う 様々な動き ◆2月末に激しい動き◆ 2月後半は共和国を取り巻く国際情勢が激しく動いた。NYフィルの平壌公演、李明博南朝鮮大統領の就任、ライス米国務長官のアジア歴訪。三つの動きを振り返ろう。 ![]() 2月25日、平壌に到着したNYフィルのメンバーたち。 26日に世界中で放送された平壌公演と、訪朝中の様々な文化交流は、 昨年までの朝米関係の成果を表している (写真:朝鮮通信提供) 最近、朝鮮半島にあった大きな動きを挙げると、@NYフィルの平壌公演、A李明博南朝鮮大統領の就任演説、Bライス米国務長官のアジア歴訪、の三つと見ることが出来る。これらの出来事は、朝米関係、祖国統一、6者会談にそれぞれ対応する事象だ。今月はこの三つの動きを振り返り、今後動き出すはずの6者会談に備えることにしよう。 ではまず朝米関係、@NYフィルの平壌公演から見ていこう。去る2月26日に平壌・東平壌大劇場で行なわれた公演では、共和国国歌『愛国歌』と米国国歌『星条旗』の他に、『新世界より』『パリのアメリカ人』などが演奏された。アメリカのオーケストラが共和国で公演を行なうことは、もちろん史上初のこと。朝鮮中央通信は、この公演を「歴史が古く、世界的に広く知られたNYフィルは、音楽監督であるロリン・マゼール氏の指揮の下に繊細で洗練された演奏と高い表現力を披露した」と高く評価した。一方の米国はどうであろうか。ライス米国務長官は、「演奏は素晴らしかったけど、北朝鮮の政治への影響について過大評価すべきでない」(『朝日新聞』2008・2・27)と述べ、NYフィルの平壌公演はあくまで文化交流にすぎず今後の朝米関係に劇的な変化をもたらすものではないとの見方だ。 しかし現在の国際情勢を考えると、NYフィルの平壌公演に政治的意味がないと断言することは出来ないだろう。手放しに楽観視は出来ないものの、今公演が昨年からの朝米関係の進展の延長線で行なわれた行事であり、その象徴的意義は大きい。現在の朝米関係改善の大勢はすでに決しており、今後は国交正常化に向けて進んでいくという明るいものと見て間違いなさそうだ。その証拠に、平壌公演に先立って行なわれたブッシュ米大統領の一般教書演説(1月28日)を挙げられる。今年の一般教書演説では、共和国に対する批判は見受けられなかった。今年の朝米関係の前進は、もはや明白とさえ言えるであろう。 続いて祖国統一に関連する、A南朝鮮・李明博大統領の就任演説を見よう。2月25日に行なわれた同演説では、南朝鮮の経済発展について特に強調された。確かに近年、南朝鮮の経済成長力は落ちており、若者の失業率は5年間で2倍に上昇した。だからこその経済発展なのだろう。経済発展と言えば、今年の共和国の共同社説でも経済面が大きく取り上げられており、北南ともに共通の課題が経済成長であることがわかる。 注目は李大統領の北南関係に対する言及だ。演説を要約すると、「北南関係は従来より生産的に発展すべき。共和国が核を破棄すれば北南協力の新しい地平が開ける。北南首脳がいつでも会い、心から話すべきだ」と言っている。また『ニューズウィーク』のインタビュー(2008・3・5)では、「南北の関係は今後停滞していくのか」との問いに、「核兵器は朝鮮半島に存在すべきではない。南北は平和を維持しながら、共に繁栄する道を探るべきだ」と答えている。李大統領に変わり、祖国統一への様々な懸念が浮上している現在。そして実際に統一を遅らせるような行為も表面化している。 しかし北南関係の指針は、6・15共同宣言、「10・4宣言」の履行であり、大統領が誰にかわろうと、今後もこの大枠で統一事業は進むべきだ。また、2月25日の福田首相との首脳会談では、「シャトル外交」(最低年1回、互いに相手国を訪れること)が復活したという。まるで南朝鮮と日本、そしてアメリカが足並みを揃えて共和国に合意履行を迫るかのように報じられているが、歴代の南朝鮮大統領を振り返ると就任直後はみな、日本やアメリカとの連携をアピールする傾向がある。私たちが取り越し苦労をする必要はまったくない。 最後に6者会談、Bライス米国務長官のアジア歴訪である。2月25日に南朝鮮で李明博大統領と、26日には中国で胡錦濤国家主席らと、そして27日には日本で福田首相と会談した。ざっくり見ていくと、まず南朝鮮では米韓同盟の強化を訴え、6者会談の進展に向けて共に力を合わせていくことで一致。中国では、楊外相にあらゆる影響力を行使してほしい旨を要請し、共和国と同盟関係にある中国が積極的な役割を果たすように求めた。楊外相はこれに応じ、6者会談を前進させるため「10・3合意」の早期履行を目指すことを確認。そして日本では、「米韓日3国の協調」を今後いっそう重視する考えを示したという。 日本の記者との懇談でライス米国務長官は、6者会談の見通しについて明らかにした。それによると、米国が求めている「完全かつ正確な」核計画の申告には、(1)抽出されたプルトニウムの全量、(2)ウラン濃縮計画の全容、(3)核兵器製造法や核物質の拡散行為の有無、の三つを含めるべきで、これらを明確にしなければならないと強調した。ただし、共和国のテロ支援国家指定解除については、「第2段階(「10・3合意」)の義務を北朝鮮が履行すれば、米政府の指定解除への手続きは出来ている」(『産経新聞』2008・2・28)と明言している。 以上のような3つの動きを見ると、現在の共和国を取り巻く国際情勢が見えてくる。朝米関係、祖国統一、6者会談が非常に密接した関係にあることは一目瞭然である。その中で一番中心的な問題は何かと言うと、「朝米関係」である。ヒル次官補が急遽訪中し、3月1日に行なわれると囁かれていた北京での朝米会談はついに実現しなかった。実現出来なかった理由は、共和国が今の段階では進展が見込めないと判断したからであろう。それもそのはず、今のところ合意を履行しているのは共和国だけであり、アメリカをはじめとする他の参加国は合意を履行していない。上の3つの動きは、堂々と合意を履行していた共和国に対する、各国の対応程度にしか見えない。 「なぜ共和国は核兵器を持たざるを得ないのか」をもう一度考えよう。李大統領は「核兵器がなくなれば…」と言うが、対話と平和の代弁者のように振舞っているアメリカは、今日のような朝米関係の新段階に入ってもなお軍事演習を行ない、軍事的挑発を続けている。共和国は自衛のために核を持たざるを得ない。アメリカの敵対視政策が変わるだけで、簡単に朝鮮半島の非核化は実現するはずだ。 「米朝は国交正常化まで1年間で進む可能性がある。日本と違うところで物事が動いている。6カ国協議も動く可能性がある。核に限って言えば、6カ国協議の枠組みで進めば日本は協力してよいのではないか」(サンケイニュース2008・2・13)。これは、日本の民主党・前原誠司副代表のコメントである。共和国を取り巻く国際情勢が好転する中で、日本の政治家からもこのような発言が徐々に出てきている。こんな時だからこそ、私たちセセデは誰よりもしっかりとした観点を身に付け、国際情勢の本質を見抜いていこう。 |
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