セセデ連続講座2007年 11月 - 非核化は第2段階へ  「10.3合意」

◆ポイント◆
朝鮮半島の非核化に向けた次の措置と言われる「10.3合意」では、何が決まったのか


朝鮮半島の非核化=朝米関係正常化は、確実に前進している(写真は7月の6者会談)


 9月末から10月にかけて、共和国を中心とした朝鮮半島情勢は大きく動いた。周知の通り、北南首脳会談が成果的に幕を閉じたことがその一つ。そしてそれに先立って開催された、朝鮮半島の非核化を巡る6者会談で大きな動きがあった。共和国を取り囲む情勢は、明らかに好転していると言える。今回は先日行なわれた6者会談を経て、10月3日に発表された合意文書について見ていくことにしよう。



「10.3合意」の第1項

 6者会談は、9月27〜30日にかけて北京で行なわれた。今回の6者会談では、8〜9月に行なわれた5つの作業部会の結果が報告、2.13合意の初期措置履行が確認され、9.19共同声明履行の第2段階に向けた目標や、各国がとるべき行動について論議された。またこの間、朝米、朝・日間での話し合いも行なわれた。そして休会を経て10月3日、合意文書が発表された。合意文の項目は以下のように大きく4つに分かれている。
 第1項は「朝鮮半島の非核化について」。ここでは「共和国はすべての核施設の無能力化に同意した」と明記されており、その期間については「12月31日までに寧辺の5000kw実験炉、寧辺の再処理工場および核燃料加工施設の無能力化は完了される」とされた。具体的方法は、検証可能かつ国際基準の原則に沿って、首席代表によって採択される。また無能力化はアメリカ主導で行なわれ、その第一歩として「アメリカは、無能力化を準備するために今後2週間以内に訪朝する専門家グループを主導する」こととなった。第1項ではさらに、「共和国は12月31日までに、2月13日の成果文書に従って、すべての核計画の完全かつ正確な申告を行なうことに合意した」こと、「共和国は、核物質、技術及びノウハウを移転しないとの約束を再確認した」ことが盛り込まれており、これらはすべての核計画の申告と技術や知識を拡散しないことを約束したことになる。合意文書の第1項を通じて、朝鮮半島の非核化がまさに第二段階に入ったことが感じられる。



アメリカの「義務」が書かれた第2項

「10.3合意」の第1項が朝鮮半島非核化のため、主に共和国が行なう事項を記しているとすれば、第2項、第3項は、アメリカをはじめとする参加国が行なうべき「義務」が明記されていると言えるであろう。合意文の第2項は「関係者の間での国交の正常化について」書かれている。「共和国とアメリカは、二者間の関係を改善し、完全な外交関係を目指すことを引き続き約束」し、「アメリカは共和国のテロ支援国家指定を解除する作業を開始し、共和国に対する対敵通商法の適用を終了する作業を進めることについてのコミットメント(公約)を想起しつつ、朝米国交正常化のための作業部会の会合におけるコンセンサス(合意)を基礎として共和国がとる行動と並行してコミットメントを履行する」とある。
 注目すべきは、テロ支援国家の解除と対敵通商法の終了が明記されていること。アメリカの共和国敵視政策を最も象徴するものだからだ。日本では「テロ支援国家の解除される期日が書かれていない。拉致問題の解決なく解除もなし、と主張する日本を汲み取ったからだ」と報道が出ているが果たしてそうだろうか。確かに解除に関する期日の表記はない。しかし「共和国がとる行動と『並行して』公約を履行する」と明記されている。これは多少消極的ではあるが、アメリカが共和国と「行動対行動」の原則に基づいて合意を履行する――テロ支援国家を解除することを意味している。共和国は合意をいつも履行してきた。つまりは12月31日までに解除すると言っているも同然ではないだろうか。
 第2項にはまた、共和国と日本の国交正常化について「平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として早期に国交を正常化するため、誠実に努力する」と書かれている。共和国は拉致問題に対して誠実に謝罪し努力をした(セセデ9月号、『連続講座』参照)。今度は日本が誠実に行動する番と言えよう。このように第2項では、日本と特にアメリカの「義務」について書かれている。
 現在6者会談は、共和国とアメリカによって推し進められている。なぜなら6者会談は朝鮮半島の非核化について議論する舞台であり、非核化の当事者は共和国とアメリカであるからだ。アメリカが当事者と言うと不自然な感じも否めないが、共和国が「なぜ核を持ったのか」を考えてみよう。他国を侵略するためであろうか。経済・政治・軍事的面で様々に圧力をかけるアメリカに、真っ向から対抗するためであろう。つまり共和国の核は、アメリカの敵視政策が生んだものなのである。アメリカが共和国に対する敵視政策を改め、朝米の国交正常化がなされた時、朝鮮半島に完全な非核化が訪れる。この観点で見ると、なぜ「6者」会談なのに共和国とアメリカが特に注目されているかがわかるはずだ。  



合意は履行されてこそ  

 第3項は「共和国に対する経済及びエネルギー支援について」書かれている。合意文で「2.13合意に従い、共和国に対し、100万tの重油(既に供給された10万tを含む)に相当する規模を限度とする経済、エネルギー及び人道支援が提供される」と再確認された。これも2.13合意に従う参加国が行なうべき義務を、再確認したものであると言えるであろう。そして第4項では「6者閣僚会合について」書かれ、「適切な時期に、6者閣僚会合を北京において開催することを改めて表明」した。
 ここまで紹介した10.3合意書には、6者会談に先駆け9月1〜2日にかけてジュネーブで行なわれた、朝米作業部会での合意が色濃く反映された。同作業部会で朝米が合意した、「年内核無力化」と「テロ支援国の解除」が、主な中心事項だからだ。発表された合意書は、まさに朝米作業部会の合意をそのまま映し出したものに過ぎないとさえ言える。ここからも6者会談が朝米主導であることを感じることが出来る。
 共和国を取り巻く情勢は好転している。しかし忘れてはならないこともある。その典型は、朝米作業部会と6者会談の間、『ニューヨークタイムズ』などが報じた共和国とシリアの「秘密核協調疑惑」だ。共和国外務省が9月18日にそれをバッサリと否定したが、朝米関係改善を良しとしないアメリカの一部勢力が描いたものであろう。思い起こせば6者会談で9.19声明が出された時も、アメリカはおもむろに「共和国の偽ドル問題」を騒ぎ立てた。そう、未だにアメリカには合意を履行しない動きがあるということだ。
 日本では共和国が関わる数々の合意履行が上手くいかない理由を、まるで共和国にあるかのように報道するが、合意履行の妨げはいつも他国なのである。6者会談のそれは、今やアメリカである。急転する状況の中だからこそ、私たちはこのことを今一度しっかりと知るべきではないだろうか。



「10.3合意」(骨子)

1.朝鮮半島の非核化  
@共和国は9.19共同声明と2.13合意の下で破棄される対象となる、すべての核施設を無能力化することに合意。A共和国は2007年12月31日までに、すべての核計画の完全な申告を行なうことにした。B共和国は、核物質や技術、ノウハウを移転しないことを約束した。

2.国交正常化  
@共和国とアメリカは、完全な外交関係を目指すことを約束。アメリカは共和国に対するテロ支援国家指定を解除する作業を開始、また対敵通商法の適用を終了する作業を、共和国の行動と並行して履行する。A共和国と日本は、平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し早期に国交を正常化するために努力する。

3.共和国に対する経済及びエネルギー支援  
2.13合意に従い、共和国に対し100万tの重油に相当する経済、エネルギー及び人道支援が提供。

4.6者閣僚会合  
6者は適切な時期に、6者閣僚会合を北京において開催することを表明。







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