セセデ連続講座2007年 8月 - 2.13合意の履行とBDA問題

◆ポイント◆
合意履行の上で重要なBDA問題を、共和国と米国はそれぞれどう捉えたのかを知る。



 今年2月に開かれた6者会談で合意された、朝鮮半島の非核化のための初期段階措置(2.13合意)。2.13合意がバンコ・デルタ・アジア(BDA)問題が解決されるや否や、現在急ピッチで履行されている。米国側代表ヒル次官補が電撃訪朝したと思いきや、国際原子力機構(IAEA)の実務代表団も共和国を訪れた。
 歴史的な局面を生きる私たちセセデが、日本の報道に揺らぐことなく、この情勢を正確に捉えられるよう準備することは重要なこと。今回は朝鮮半島の非核化に向けた6者会談の重要なキーワードである、「2.13合意」と「BDA問題」について考察してみよう。



履行されないでいた2.13合意

 振り返れば昨年10月、アメリカの軍事的威嚇と制裁圧力に対処して行なわれた共和国の核実験以降、ブッシュ政権は強硬政策から一転して6者会談の再開を選択した。そして今年2月8〜13日に開かれた6者会談では、とても重要な合意が6者の中でなされた。
 それは共和国の核放棄に向けて、各国が初期段階に取ることで合意された措置――通称「2.13合意」である。具体的には、@共和国は寧辺にある核施設の稼動停止と封印を行なうとともに、監視・検証のためIAEA要員の復帰を求める、A共和国はすべての核計画の一覧表について他の5者と話し合う、B朝米は外交関係樹立を目指す協議を開始。米国は共和国のテロ支援国家指定を解除する作業を始める、C朝・日は国交正常化の措置を取るため協議を開始する、D共和国は重油5万トンに相当する緊急エネルギー支援を受ける、の5つが合意内容。この2.13合意は「行動対行動」を原則に、2月の会談から60日以内に履行されるよう決められていた。
 しかし実際は60日を過ぎても2.13合意が履行されることはなかった。そのもっともな原因は、BDA問題にある。共和国はアメリカに対して、「BDA問題の解決なくして2.13合意の履行はない」と頑なに主張し続けたのである。



二つのBDA問題

 BDA問題とは、マカオの銀行にある共和国の資金2500万ドルをアメリカが全額凍結した問題である。偽札が含まれている云々しながら(結局なんら証拠が挙がらなかった)、アメリカが加えた共和国への金融制裁のことである。表面上は資金の問題である。しかしこの問題を共和国がどのように捉えていたかを知ることは、2.13合意履行の遅れと、昨今の朝米関係を見極めるために不可欠な要素である。
 共和国とアメリカは1953年以降、休戦状態であることから、お互いを敵対視し、牽制してきた。しかしそのような敵対関係の中でも、停戦協定や国交正常化に向けて幾度も協議は行なわれており、いくつかの合意文も生まれた。特に顕著なのは1994年の朝米基本合意文である。この時、朝米間は本当に国交正常化される直前まで来ていたという。2000年10月には共和国の国防委員会第一副委員長が訪米し、クリントン大統領と会談、そして今後敵対関係から抜け出すことを約束した朝米共同コミュニケも発表された。しかしブッシュ政権誕生により、アメリカの態度は急変、約束されたそのすべてがないがしろになってしまった。こればかりではない。近年6者会談でなされた9.19声明も、声明が発表されるや否や、アメリカは共和国に対する金融制裁を発動させた。
 このようにアメリカは、共和国との数々の合意を、今まで幾度となく破ってきたのである。そんなアメリカとの今回の合意――2.13合意を、共和国が「行動対行動」で守れるだろうか。合意は履行されなくてはなんの意味も持たない。そして合意を履行するか否かは、相手を信頼出来るかどうかによるところが大きい。悪く言えば、所詮「約束事」に過ぎないからだ。「アメリカが態度を改めなければ、決して我々は合意を守れない」。これが共和国の出した今回の結論であった。
 そこで今回共和国は、BDA問題の解決過程を、アメリカへの布石にしたのである。つまり、もしBDA問題をアメリカがこちらの要求通りに解決すれば、それはアメリカが共和国との関係を真摯に正そうという姿勢を持っていることを証明することになる。だから共和国は、BDA問題をただ2500万ドルの凍結資金を取り戻す問題ではなく、6者会談という舞台を通じてはたして自分の国が核兵器を持つ必要がまったくない状況を作れるかどうかを「確認するための問題」と捉えたのである。その反証資料がBDA問題であったのだ。共和国が、BDA問題の解決を何よりも優先させることを、決して譲らなかった理由がここにある。
 アメリカは当初、BDA問題を朝米間の敵対関係を解消する政治的な問題と見られず、ただの金融技術的な問題と捉え、実務的に処理しようとしていた。だからアメリカはBDAの共和国の資金を、第3国の銀行に送金するよう工夫していたのだ。しかし共和国の真意を知り、BDA問題を朝米関係改善の問題と捉え直したアメリカは、結果的にBDA問題解決のためにニューヨーク連邦銀行を介入させた。これは、このBDA問題をアメリカ政府が直接関与していくということの証明であり、強いては共和国との関係を正常化させていくというアメリカの意思である。




急転する朝米関係の主動

 BDA問題が解決されるや、共和国はすぐに2.13合意を実行した。ハイノネン事務次長を団長とするIAEA実務代表団は、6月26〜30日にかけて訪朝し、「見たいところはすべて見ることが出来た。視察に満足している」と語ったという。また6者会談も早期に再開されると言われている。朝鮮半島の非核化、つまりは朝米停戦協定からなる朝米関係の正常化は、現在いい方向に進んでいると言っても差し支えないであろう。これらの情勢を見ると、この流れをリードしているのは、紛れもなく共和国であることを実感出来る。アメリカを対話の席につけ、行動させているのは間違いなく共和国である。 「6者会談に日本はいらない」。こう述べた共和国外務省の言い分も今や誰もが納得するであろう。日本が朝鮮半島の非核化に向けて、何をしたであろうか。万景峰−92号の入港禁止措置をはじめ、総聯組織に対する不当な強制捜査、在日同胞に対する差別を繰り返す日本。「対話と圧力」を高々と掲げているがまったく「対話」もなく、相変わらず共和国と在日同胞に対して非難の目を向けているだけだ。
 私たちセセデは現在、とても歴史的な局面を迎えていると言えないだろうか。何十年来の朝米関係が、本当に改善される土台が整ってきているのだ。もはや「何もしていない」日本当局の端的なマスコミ報道に揺れる必要もまったくあるまい。私たちは正しく今の情勢を捉え、そしてはっきりと現実的な希望を持とう。共和国主動の下に進められる6者会談を経て、朝米関係が正常化される日は決してそう遠くはないはずだ。





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