| ■セセデ連続講座2007年 7月 - 第4回UN人権 理事会とセセデの役割 ~洪祥進先生に聞く~
◆ポイント◆ 人権と国際の視点から見る日本の姿とは。今、私たちセセデは何を「知る」べきか。
前回の連続講座で述べたとおり、国際社会での日本の孤立は新聞やテレビ報道とは逆で、現在、より一層物議を醸している。今月の連続講座では前号に引き続き、去る4月に行なわれたUN人権理事会に参加した、「朝鮮人強制連行真相調査団」(※1)朝鮮側事務局長の洪祥進先生に、その時の模様などを含めて伺ってみることにした。 ―第4回UN人権理事会で日本に批判が集中したのはなぜでしょう? まず「国際連合」(国連)という機構はありません。正確に訳すのならば「United Nations」で「連合国」、略称「UN」です。また「オランダ」は「ネーデルランド」、「ジュネーブ」は「ジェネバ」です。日本は国際機構の名称から国名までも「創氏改名」でしょうか。UN人権会議で日本についてよく言われることは、経済は先進国だが人権は後進国。これが国際社会での日本の評価ということを、まず強調しておきたいと思います。 世界人権宣言前文では、人類社会の全ての構成員の「固有の尊厳」及び「平等」としています。ところが日本では差別をなくすことが、「尊厳」の尊重と理解しているようです。 差別をなくしても、他民族の「固有の尊厳」が尊重されなければ本来の人権擁護とかけ離れたものになります。例えばアイヌ民族の言語の問題、チマ・チョゴリに対する嫌がらせがこれに該当します。他民族の民族的尊厳を尊重する姿勢が欠落し、日本人と同じことはいいことだと言わんばかりの風潮があると言えます。例えば「同和」「同化」も朝鮮語では「동화(トンファ)」であり、UN特別報告者も「融和、同和はアイデンティティの否定」と発言しています。(※2) ―他民族の尊厳否定は、なぜ犯罪となるのですか? 過去ナチ・ドイツはゲルマン民族の優越性を主張し、ユダヤ人を殺りくし、戦争へと進みました。フランスでは公用語をドイツ語と改め、フランス的な名前をドイツ語的に改名しろとしました。同様に日本も「大和民族」の優越性として、朝鮮人の「同化」政策を行なったのです。ちなみにドイツの他民族に対する「同化」政策は戦争犯罪として処罰されましたが、日本はまだ反省すらされていません。 様々な国際的な人権条約中、最も早い1965年の第20回UN総会で採択されたのが「人種差別撤廃条約」です。他民族の尊厳を否定することは、平和と安全を脅かす最たる危険と認識されています。だからUN憲章の第1条にも、このことが指摘されているのです。(※3) ―日本政府の厳重性はどこにあるのでしょう? またこのような差別が解決する見通しはありますか? 在日同胞に対する差別が、過去から現在に継続されている人種差別であるということです。チマ・チョゴリ切り裂き事件のことを1994年のUN人権小委員会で訴えると、女生徒に対して暴力が加えられているとの事実と共に、強制連行被害者の子孫とのことで、世界の人たちが驚愕し日本政府を非難しました。日本政府はこれは大変だと国際的な非難の中で渋々「遺憾」「憂慮」発言を行ないましたが、これが在日朝鮮人問題で初の発言です。 今回の人権理事会でも、当然、朝鮮総聯への弾圧が注目されました。とりわけ人種差別の典型とも言えるのが漆間発言(※4)です。警察庁長官という日本高官の人種差別発言。 本来ならば民間の差別発言等を政府が責任を持って抑制すべきですが、なんと日本では高官が堂々と人種差別発言を行ない、家宅捜索を繰り返しているのです。これに参加者たちは閉口していました。 同胞でも知らない人が多いのですが、UNの中で朝鮮学校に対する差別は、主要人権条約すべてに入る日本の中で一番大きな人権問題で、UNでも関心が非常に高いのです。また、「ファン・ボーベン国連最終報告書」(※5)にも書かれている通り、いかなる人権侵害も被害者の被害回復に対する権利を発生させます。在日同胞は優遇されるべき対象なのです。 ―私たちがすべきことはどんなことでしょうか? まずは「真実を客観的に知る」ことです! 現在の「状況」を「過去の在日同胞の歴史」と「国際的な趨勢」から立体的に見ることです。例えば「人権後進国日本」がUN安保理に入ろうなんてとんでもないことで、世界は認めていません。日本は現在もUN憲章第107条による「敵国」です。 「美しい国」という美名の下に、「拉致問題」を年頭から世界を駆けめぐり訴えたが、「慰安婦」問題の「強制」で恥さらしとなった首相。今回のUN人権理事会の会場とロビーでは、『二枚舌の安倍首相』(ワシントンポスト社説・3/24)の「少なくとも名だたる民主国家を自称している国の指導者としては恥ずべきことだ」などの新聞コピーに参加者が注目し失笑していました。 次に「過去の在日同胞の歴史」を知ることが重要です。私たち真相調査団はそれを実践するために、UN理事会にも参加し、歴史を調べているのです。まず在日同胞の歴史を自分の問題として捉え、そして体で実感する必要があります。自分の両親の歴史、自分の居住地の歴史を知っていますか? 調べてみてください。次に体験者の話を直接聞きビデオや書物で学び、日本各地にある強制連行現場に行って、肌で感じてください。 今、在日同胞の若い世代の民族性を守ることが望まれています。民族性を木に例えると、花や葉は、朝鮮語や文化と言えます。花や葉は、根がしっかりしてこそ育ちます。その根が在日同胞の歴史なのです。今回の人権理事会に参加した兵庫県商工会の会長も、父親が軍属として徴用され死亡し、未だになんら謝罪も賠償もないという根があるから、強い意志で不当を訴えられたと思います。21世紀の明るい在日同胞社会のために、セセデの活動が必要です。方法をいろいろと模索してみてください。例えば地元に強制労働の跡地があるならば、そこに日本人も一緒に集めてライブ形式で追悼モイムを開いてもいいでしょう。形式にとらわれず、斬新で大胆に活動してください。 ―ありがとうございました。 過去を知り、現状を知る。あらゆる角度から私たち自身について正確に知る。第三者的に知識としてではなく、自分自身の問題として気持ち、感情、「心」で知る。私たちセセデたちがこれからも民族的アイデンティティを固持し続け、民族の誇り、希望を持ち、新時代を担うためにも、その知識を基盤としたより積極的な「行動」が必要なのではないだろうか? 私たちの「歴史」を取り戻し、未来を「消滅」させられる前に…。 用語説明 (※1)1972年に日本の学者、文化人、法律家らと総聯とで結成された。日本政府による朝鮮植民地統治下の強制連行(日本軍「慰安婦」、「労務動員」、軍人・軍属など)の事実を、文献・現地調査・証言収集によってより明らかにし、北南朝鮮と日本の真の友好と和解を目的として結成されたのだ。現在は、日本25都道府県に朝・日合同調査団がある。現在、日本各地で集会を開き精力的に真実を訴えている他、国際舞台へと活動の場を押し広げている。 (※2)世界人権宣言50周年記念アジア・太平洋人権教育国際会議(1998年11月)当時、UN人種差別撤廃条約委員ファン・ボーベンの会場内発言。 (※3)外務省ホームページの『人種差別撤廃条約』の「作成及び採択の経緯」参照。 (※4)2007年1月18日に行なわれた警察庁長官の発言。「北朝鮮に日本と交渉する気にさせるのが警察庁の仕事。そのためには北朝鮮の資金源について事件化し、実態を明らかにするのが有効だ。北朝鮮が困る事件の摘発が拉致問題の解決に近づける。そのような捜査に全力を挙げる」。この発言から総聯組織への強制捜索が、一層露骨に行なわれるようになった。 (※5)1994年3月4日の国連人権委員会で決議された、「人権と基本的自由の侵害を受けた被害者の原状回復、賠償および厚生を求める権利についての研究」のこと。重大な人権侵害の被害者に対する被害回復に関する提案が書かれている。重大な人権侵害とは、「集団殺害、奴隷制および残酷で品位を傷つけるような取り扱いまたは処罰、強制による失踪、恣意的かつ長期的な拘禁、住民の国外追放または強制的な移動、とくに人種または差別に基づく組織的な差別」のこと。植民地時代の朝鮮人の扱いはこれと一致する部分が多数あると言えるであろう。 |
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